実写映画クランクアップ記念!『泣きべそクライマー』作者広田ヒロム×小野田坂道・真波山岳鼎談

実写映画クランクアップ記念!『泣きべそクライマー』作者広田ヒロム×小野田坂道・真波山岳鼎談

笑うオタクライマー小野田坂道×ニコニコ王子真波山岳×実写映画化で話題の『泣きべそクライマー』作者 広田ヒロム。新進気鋭のクライマー二人が大ヒット漫画の魅力を語る!!

週刊少年ウィナーで大ヒット連載中の『泣きべそクライマー』。泣き虫の主人公、山田登(やまだ・のぼる)が自転車ロードレースというスポーツに出会い、仲間と日本一を目指すというスポ根自転車漫画だ。連載9年目の現在は3年インターハイ編に入り、最終学年となった登とそのチームメイトらが、悲願の優勝を目指してライバル達とアツいバトルを繰り広げている。

昨年は満を持してテレビアニメ化が実現し、大好評のうちに1年インターハイ編を駆け抜けた。このアニメで新たなファンも獲得し、先日は人気俳優を多数起用した実写映画もクランクアップ。今春の公開を控え、早くも話題となっている。

今回はその『泣きべそクライマー』作者の広田ヒロム先生と、プロ1年目にして大活躍をみせる新進気鋭のクライマーコンビ、小野田坂道選手&真波山岳選手が都内某所に集合。自転車への熱い想いを語ってくれた。

小野田選手・真波選手も絶賛!『泣きべそクライマー』のアツい展開。

――アニメ化に続いての実写映画化。絶好調ですね。

広田 ありがとうございます。先週無事に撮影が終了したそうです。長いこと細々やってきたんで、ちょっと最近の勢いがすごすぎてアップアップしてます(笑)

――『泣きべそクライマー』、お二方はお読みになってますか?

小野田 はい、読ませていただいてます! 今週もアツかったですよね! 牧村さんのセリフに痺れちゃって、僕、ちょっとしばらく立ち上がれませんでした。

真波 オレも読んでます。今週もすごかった。オレは藤城の行動にグッと来ました。なかなかやりたくてもできないよね、アレ。

小野田 うん! 憧れるよね、あの……。

――おっとお二方、ネタバレになりますのでそのあたりで。

小野田 わっ、すみません!

真波 ごめんなさい。でも本当に面白くて、毎週ワクワクして読んでます。リアルタイムは連載二年目からくらいかな。うちの高校、寮生が多いんで、めっちゃ回し読みされてましたよ。コミックスが出たら当番制で買ってくるの。オレは寮じゃなかったんですけど、泊めて貰ったときに一気読みしてハマって、家にも揃えてました。そしたら「新刊回ってこねーんだよ!」ってチームメイトが読みに来たり(笑)

小野田 僕が読み始めたのは高校2年生くらいからかな。……あの、実は、スポ根ものってもともとちょっと苦手っていうか……ゴメンナサイ。ずっと体育とか、勝負するのとか苦手だったんで、スポーツ漫画が眩しすぎて……ハハハ……。
 でも、友達が「面白いで!」って貸してくれて、読んでみたらホント、すっごい面白くて。それからはずっと追いかけて読んでます。
 主人公の山田くん、僕に似てるってよく言われるんですけど……似てるかな?

真波 似てる似てる。一生懸命でまっすぐなとことか。あと坂道くんもけっこう泣くよね。

小野田 さ、最近は泣いてないよ!

真波 アハハ、そうだっけ。でもノボルはすごいよね、あんなに泣きながら登るのはオレには無理。呼吸困難になりそう。

小野田選手は漫画より漫画的??

――主人公の山田登は泣きながら登るときが速い、異色のクライマー。お二方とはある意味逆ですね。

真波 オレたち、笑っちゃいますからね、本気で登るとき。でも、坂道くんはある意味、ノボルより漫画のキャラっぽい。高1のインターハイ、初心者なのに優勝しちゃったでしょ。ノボルは1年のときは散々に負けちゃうじゃないですか。

広田 ああー(笑)そうなんです、初心者の小野田選手が1年生でインターハイ総合優勝! ってニュースが入ってきたとき、僕はまさに山田登がインターハイに出て現実に打ちのめされるあたりを描いていたんですね。「全国には強いヤツらがいっぱいいて、始めたばっかりの僕が勝てるわけなかったんだ! ちくしょう、ちくしょう!」って号泣しながら、それでもペダルを回して、仲間にも支えられて最後まで走りきろうとするっていう。
 で、編集さんと「優勝しちゃいましたね……」「しかもすごいドラマティックな展開。現実のほうが漫画っぽいじゃん、どーすんの」「小野田選手すごすぎ」「え、登も優勝させる?」「いやいやいやいや」って、深夜のファミレスで青い顔して(笑)

小野田 わあ、な、なんかすみません……。

広田 いえいえ! 小野田選手、真波選手をはじめとする選手の皆さんの活躍には本当にインスピレーションをいただいてます。ここ数年で日本のロードレースってすごく強くなったじゃないですか。
連載を始めた当初、「描きたいけどここまでやっちゃうと現実的じゃないよね」ってボツになってしまったネタが色々あるんですよ。登は「等身大の主人公」っていうキャラクターなんで、夢は叶えさせたいけどあんまりすごすぎると読者がひいちゃう。「だからこれは無理だな」って思っていたことを、選手の皆さんがどんどん叶えてくれている。おかげで、連載開始当初より物語がずっと広がりました。
 自転車ファンとしても嬉しいことですし、自転車漫画描きとしても非常にありがたいです。

――本当にここ数年でぐっと強くなりましたよね。競技としての知名度も上がりました。このあたりは、『泣きべそクライマー』の貢献度も非常に高いと言われていますが……。

広田 いやいや、僕の漫画の影響なんて、選手の皆さんの活躍に比べれば。

――この漫画でロードレースを知って、実際のレースを見たり、自分でも乗ってみようという人も増えていますよ。

小野田 そうなんです! 『泣きべそクライマー』をきっかけにレースに見に来てくださる方、すごく多いんですよ。レースとかイベントで、山田くんの学校のレプリカジャージを着てきてくれる観客の人もよく見ます。総北高校……僕の出身校のジャージとちょっと色とか似てるので、見かけると嬉しくなっちゃいますね。

真波 増えたよね。オレは藤城が着てるやつが目に入っちゃうなあ。水色でハコガクっぽいし。小学生くらいの子とか、あと若い女性のひとが増えてますよね。
 よくレースを見に来てくれる友達がいるんですけど、チームグッズ販売とか、すごく人が増えたから買うのが前より大変なんだって言ってました。漫画のグッズだけじゃなくてオレたちのチームの物も買いに来てくれるの、嬉しいよね。

小野田 うんうん! レース中も応援が多いと盛り上がるしね。映画が公開されたらもっと増えてくれるんじゃないかって、僕たちも盛り上がってます。広田先生、ありがとうございます!

広田 恐縮です。大好きな自転車界に自分の漫画が寄与できれば大変嬉しいことですね。

――その映画ですが、プロ選手が出演するということも話題になりましたね。

小野田 鳴子くんと東堂さんですね! オファーが来た瞬間に即決だったって聞いてます。

真波 自転車界の目立ちたがりコンビ。(笑)

――東堂選手にいたっては、拠点とするスペインから強行軍で帰国しての撮影だったとか。

真波 ちょうどスケジュールが何日か空いたので、こっちでやれる仕事ぎゅうぎゅうに詰め込みまくったらしいですよ。映画のほかに雑誌とかインタビューとかTV番組とか、7・8本あったとか言ってたかな? 飛行機と移動で寝てたって。

広田 お二方とも演技も非常に達者で、バシッと決めて下さったと監督から聞いています。調整に影響など出てなければいいのですが……。

真波 大丈夫大丈夫。あのひと調整の鬼なんで、ほんとに無理なら引き受けないですよ。すごく楽しかったみたいです。

小野田 Twitterとかインスタとかすごかったですもんね! 鳴子くんもすごくいい経験だったって言ってました。こないだ会う機会があったんですけど、「ワイはなにしろ映画俳優やからな!おまえとは格が違う!」って、今泉くんに何回も自慢してました(笑)

広田 そう言っていただけてひと安心です。

現役プロ選手の語る、『泣きべそクライマー』の魅力。

af9920048252――お二方にとっての『泣きべそクライマー』の魅力は。

小野田 仲間との絆です! 僕が一番好きなのは牧村さんっていうキャラクターで、山田くんの先輩でもう卒業しちゃったんですけど、山田くんにアドバイスをくれたり、くじけそうになったときに黙って引いてくれたり、すごくカッコイイ先輩なんですね。ほかにも、同学年で山田くんの相棒の古寺くんや、2年生の一平くん、山田くんには頼もしい仲間がいて、苦しい場面を助け合って乗り越えていく。そこがすごく好きです。
 さっき、僕の最初のインターハイの話がありましたけど、あれだって僕がすごいんじゃなくて、周りの人たちがあの舞台まで僕を連れてきてくれた。仲間のためだから最後まで走ることができたし、ゴールにジャージを届けるっていう一心でペダルをまわした、その結果です。それが自転車ロードレースの素晴らしいところだと思うし、体育会系もスポ根漫画も苦手だった僕が、こうしてプロにまでなれたのも、自転車がそういう競技だから。
 練習で疲れて帰ったとき、『泣きべそクライマー』を読みかえして、嬉しかったことをたくさん思い出して、また頑張ろうって思える。それから、友達に会いたくなります。そういう魅力のある漫画だと思います。

真波 オレはこの漫画の、どんなに苦しくても自転車から離れられない――ってとこが好きですね。ノボルがなんども、もう無理だってなるじゃないですか。でも、自転車にまたがって、ハンドルを握って、そうしたらもう走らないでいられない。ノボルだけじゃなくて、藤城なんかもそうですよね。もういいじゃん、そこまでしなくてもいいじゃんって場面でも、自転車を選んで、レースに戻っていく。自転車ってそういう怖さがあるよなって思います。もちろんスゲー楽しいんですけど、でも、取り込まれたらもう逃げられない、みたいな。
 実はオレ、一時期『泣きべそクライマー』が読めなくなってた頃があるんです。1年目のインターハイで負けて、で、ノボルもこてんぱんに負けるじゃないですか。いやもうほんと、無理、やめて、ってなってましたね。広田先生には申し訳ないんですけど、本棚で目に入るのもキツくて、もう捨てちゃおうかと……でも、そこからもう一回、ちゃんと楽しく乗れるようになってから読みかえして、そうしたらもう「これだよ!」って。夜中までずっと読んでましたね。次の日遅刻して怒られた(笑)
 いまはあそこが一番好きです。いま読んでもキツいけど、だからいい。どうしようもなく自転車が好きで、登るのが好きで、どんなに苦しくても登らずにいられなくて……読んでると深夜でも登りに行きたくなっちゃうのが困るんですけどね(笑)
 オレたちみんな、そうだなって思います。自転車にとっ捕まっちゃってるんですよ。しんどい日も多いんですけど、でもやめられない。生きてることと自転車に乗ることが一緒、みたいな。そういう自分の気持ちにぴったり重なる言葉とか、エピソードがたくさん詰まってる。そういうところが、すごく好きです。

――熱い作品語り、ありがとうございます!
 さて、ここで少し宣伝を。映画公開に先立ち、自転車ロードレースと『泣き虫クライマー』のコラボイベントが開催されます。先生のサイン会、映画で実際に使用した機材の展示、そしてトークショーではここに来て下さったお二方に加え、映画に出演した鳴子章吉選手も参加。改めて作品の魅力や映画の見所、自転車ロードレース観戦のポイントなどを語っていただく予定です。

広田 自転車ロードレースの世界にも触れられる機会ですので、ぜひご来場ください。

小野田 精一杯つとめさせていただきます、よろしくお願いします!

真波 鳴子くんは撮影の裏話をたくさん語ってくれるそうなので、どうもお楽しみに。オレも東堂さんから色々聞いておきますね。

――さて、名残惜しいですが本日はこのあたりで。
 小野田選手、真波選手、そして広田先生、ありがとうございました!

三人 ありがとうございました。

読者プレゼントのお知らせ

広田先生の描いた山田登・藤城進のイラスト、そして小野田選手・真波選手の似顔絵、それぞれに3人のサインを入れた特別色紙をプレゼント!
ご応募は弊社編集部まで、希望する色紙の番号と今回の記事の感想、住所氏名年齢性別を明記のハガキにてお送りください。インターネット応募はこちらのフォームより。ご応募お待ちしています!

 

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サイクルタイム編集長
編集長兼サイト制作者。某箱根の山神の走りに惚れ込み、高校生たちのレースを追いかけている内に、気がつけばこんなところまで来てしまいました。選手たちの勇姿は勿論、自転車に関わるさまざまな人々の魅力を多方面からお伝えして行ければと思います。