ツール・デ・フランドル覇者 荒北靖友選手独占インタビュー!

ツール・デ・フランドル覇者 荒北靖友選手独占インタビュー!

モニュメントを振り返って、そして次なる目標はツール・ド・フランス

モニュメント初制覇を果たした荒北靖友選手が、フィニッシュ地点のオーデナールデから車で30分ほどに位置するコルトレイクの自宅でCYCLETIMEの独占インタビューに応じてくれた。レースを終えたチームメイトたちが集うリビングには美味しそうなディナーの香りが漂い、テーブルの上には可愛らしいピックの刺さった監督手作りのカナッペが用意されていた。

――ありがとうございます、荒北選手。お食事前にもう一仕事よろしくお願いします。

荒北:しゃっす。日本語のインタビューは久しぶりです(笑)

 

――改めまして、ツール・デ・フランドル優勝おめでとうございます

荒北:ありがとうございます!

 

――それから、27歳のお誕生日おめでとうございます!

荒北:あざっす(笑)27って喜んでいいのかわかんない年齢なんですよネ。

 

――今大会を振り返って、この大きな勝利を掴んだ要因は何だと考えていらっしゃいますか?

荒北:チームオーダーでとにかく前方キープって指示が出ていて、それを上手くこなせていたことですね。道幅が狭い時に位置取り悪いと後ろに行きがちになるんですけど、その辺ヴィンス(ヴィンツェンツォ・スターレンス)がガイドになってくれてました。なんで序盤からエースに仕事させてんだって監督には怒られてたンですけど(笑)おかげで勝負所までプロトンの前の方に残れました。

 

――前方で走るメリットは?

荒北:落車回避とアタックへの反応がしやすいことですね。落車の影響で足止めされるとフランドルのコースでは前方復帰はほぼ絶望的なんで。来週のパリ~ルーベでも言えることですけど。

 

――ゴール時点で乗っていたロードバイクはスターレンス選手のバイクでしたが

荒北:シュテインビークドリシュは215キロくらいだっけ?あの手前でリアタイヤがスローパンクしてて。道が狭いからチームカーが来るまで保たないだろうなァと思ってたらポンッって完全に空気が抜けて。その音が聞こえたんじゃねぇかなァ、ヴィンスに「止まれ」って言われた時は「あー、俺のレース終わった」って本気で思いました。

 

――でも終わらなかった

荒北:はい。路肩でバイクから降りた瞬間にヴィンスのバイクを押し付けられて、「誕生日プレゼントだ」って(ウィンクしながら)

 

――カッコイイ!(笑)

荒北:惚れるっつの!(笑)ヴィンスはイタリアに長く住んでるのでちょっと仕草がイタリア人みたいになる時が多くって、気障ったらしいのはもう慣れっこなんでイライラしませんけど。で、結局そこでのロスって10秒もなかったですね。4秒くらい?これも勝因の一つですね。

 

――ゴール直後のウィリーポーズは片手を離してのアピールでしたが、いつ練習を? 

荒北:あれは高校時代に覚えた遊びみたいなもんで練習はしてないです。後でチームスタッフにも「お前すごくバランス感覚あるな」ってびっくりされたけど、そんなところで見直されても困るっていうか、もっと別のところで高等技術発揮してるんだけどなァ……。誰も気づいてくれないんで、読者は気が付いたらメールください。抽選で一名様にチームからメンバーの直筆サイン入りブロマイドがプレゼントされます。いらないよネ。

※カンプレ・モリダのホームページからファンメールフォームで応援メッセージを送ると本当に抽選で一名様に当たります。

 

――いやいや欲しいですよ(笑)終盤のオーデクワレモントでのアタックは見事でした

荒北:あそこはもう逃げる他に選択肢がなくって。あの時集団はもう7人まで減っていて、全員が自分よりスプリント力があるんですヨ。集団で山を越えても勝ち目がなかったんです。

 

――それでもスターレンス選手はバイクを荒北選手に託された

荒北:自分の得意分野は逃げと独走なんですヨ。あの7人の中で独走力はダントツだったと思います。ゴール直前の数キロは平坦の舗装路だから、オーデクワレモントかパテルベルグでうまく逃げられたら勝てるっていうのはヴィンスも想定してたんじゃねぇかな。ヴィンスが集団でスプリント勝負をするのと勝率はそんなに変わらないか、俺が行った方がちょっと勝ち目あったかもしれないですね。それでも自分の国のでっかいレースで日本人の新入りにチャンスくれてやるってのは、なかなか出来ることじゃない。器が違う。

 

――得意分野は逃げと独走ということですが、今後狙っていきたいレースを教えてください

荒北:直近ではパリ~ルーベで上位完走ですね。これも石畳を抜けた後はゴールまで平坦路ですから先頭集団に残りさえすればチャンスがあると思います。チームメイトからも「最後はゴールデンキノコダッシュかませよ」って言われてて。

 

――ゴールデンキノコというとあの。

荒北:赤い帽子の配管工がカートレースやってるあれです(笑)連続アタック得意なんで。スプリントトレイン組んでる時の映像にスターの無敵音楽組み合わせた動画とかYoutubeに上がってますよ。

 

――それ誰が作ってるんですか(笑)

荒北:チームメイトが暇つぶしに。あ、話戻しますか、それとももうちょっとふざけた話しますか(笑)

 

――戻しましょう。

荒北:クラシックシーズンが終わったら少し調整に入って、今年はグランツールを走りたいと思っています。ワールドツアーチームの醍醐味ですし、チャンスがあるとすればツール・ド・フランスかブエルタ・ア・エスパーニャ。うち(カンブレ・モリダ)はイタリアチームですから、選手もイタリア人が多いし、ジロ(・デ・イタリア)はたぶんこのチームにいる限りは縁がないと思います。

 

――ツールとブエルタ、こっちに出たい!という希望はありますか。

荒北:ツール・ド・フランスですね。

 

――即答でしたね。

荒北:シンコフ(イタリア)の御堂筋は確実に出場してくると思うんで、ツールで(昨年の)日本選手権での借りを返しておきたいですね。それからディレクションデータ(フランス)に今年から加入した小野田チャンも、周りは誰も注目してないけど要注意です。見た目に騙されてたら痛い目みるんで。あっちが山岳の隠し玉で使ってきたら潰しに行くのは俺の役目かなァ。けど山での真向勝負は正直やりたくないですね。

――ツール・ド・フランスでの日本人選手同士の激突はファンが長年待ち焦がれたシーンですからね。

まぁそれもあるけどォ!全世界190カ国の35億人が注目してる中で大逃げ打ったら絶対ェ気持ちいいじゃないスか!だったらブエルタよりツールに俺は出たい!

 

――運び屋としての仕事だけじゃなく、逃げ切り勝利も期待していいということですかね。

荒北:たりめーだ!見とけよ、テメーら!

 

 

インタビュー後、光栄なことに一日遅れのバースデーパーティに招いていただいた。勝利の美酒と美味しいパスタ、スターレンス選手らチームメイトとの楽しい時間を満喫した荒北選手。パリ~ルーベに向けて節制中のため、大好物の唐揚げやバースデーケーキはオフシーズンまでお預けのようだ。

 春のクラシック、そして夏の大舞台グランツール。彼の野獣の如き鋭い走りに今後も期待は膨らむばかりである。

 

※レース名、地名、荒北靖友以外の人物名、チーム名等は、記者の捏造による

※別記事とはパラレル設定で作成された記事です

photo credit: Centenaire 14 18 – img n°(11) – npcmedia via photopin (license)

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桐原十六夜
スポーツ選手に憧れること早十数年。テニス、アメフト、野球にバスケと長らく球技を愛好してきました。(もっぱら応援専門でしたが!) ロードレースとの出会いは小説。 本物が見たい!と足を運んだインターハイ神奈川県大会でその魅力に憑りつかれ、気が付けばCYCLETIMEの記者として世界を飛び回る生活に。 レースレポートを中心に、選手たちの活躍を読者の皆様にお届けします!!