チームYWPD新規加入メンバー座談会!スポンサーはだぁれ!?

チームYWPD新規加入メンバー座談会!スポンサーはだぁれ!?

初冬の湯煙立ち昇る温泉宿で憩う選手たち。スポンサーアピールもぬかりなく。

12月10日の公式チーム発表会に先駆けて、チームYWPDに新規加入する4名の選手がCYCLETIMEのインタビューに応えてくれた。

東堂尽八・巻島裕介・真波山岳・御堂筋翔はシーズンオフの休養真っ最中という事で、記者をとある場所へ招いてくれた。電車に揺られ、バスを乗り継ぎ、辿り着いたのは箱根温泉・東堂庵。クライマー・東堂尽八の実家である温泉宿で選手たちは束の間の休息を楽しんでいた。女将さんの許可を経て部屋へ案内していただくと、選手たちは休日らしいラフなTシャツ姿で迎えてくれた。今回はいまだ明らかにされていないチームスポンサー企業について選手たちに尋ねてみた。

 

――まずは皆さん、今シーズンお疲れさまでした。

東堂:ありがとうございます。

巻島:日本に帰ってきてやっと気が抜けたっショ。

真波:まだまだ走り足りないや。

御堂筋:名前通りの山岳バカやな、マァナミ

 

――オフシーズンの過ごし方は選手によって様々ですが、温泉地を選ばれた理由は?

東堂:俺はこの東堂庵が実家ですから里帰りを兼ねて。巻ちゃん(巻島)たちは同じチームメイトになる者同士、休みの間に親交を深めようと俺の客人として招いたのです。

巻島:って東堂、真波はおめェの後輩だし俺にはほとんど毎日電話してきたじゃねぇか。今更親交も何もないっショ。

真波:でも俺と巻島さんは親交深まりましたよね、昨日の卓球大会で。あ、御堂筋くんと東堂さんも深まってた!

御堂筋:深まってない。

東堂:何々!?俺とまたダブルスを組みたいだと!?

御堂筋:組みたないわ!はよインタビューしろ!

 

――それでは本題に移らせていただきます。公式サイトが開設して日本初ワールドツアーチームの情報が解禁になりましたが、気になったのが「チームYWPD(ワイダブリューピーディー)」というチーム名です。通常、スポンサー企業名を冠する事が多いと思うのですが、国内にYWPDという企業や商品はありません。気になるスポンサーの正体を教えてください。

 

東堂:うむ、よくぞ聞いてくれました。それじゃ真波、正式なチーム名を言ってみろ。

真波:はい!行きますよ。(大きく息を吸い込んで)「チームヨレックス・ウィリングロード・ペワーバランシュ・ライヤモンドイル、イズム」

巻島:惜しい(笑)

真波:あれ(笑)

東堂:呂律が怪しいな(笑)じゃあ御堂筋。

御堂筋:「チームヨレックス・ウィニングロード・パワーバランス・ダイヤモンドイズム」

東堂:パーフェクトだ。チームYWPDは4社の企業がスポンサーとして我々の活動を支えてくださっています。読者のみなさんにはもっと早くチーム名やスポンサー企業の事をお知らせしたかったのですが、「長すぎるチーム名がジャージの胸部分に入りきらない」という非常に深刻な問題に直面していたため、チーム名発表がイベント(サイクルスポットインターナショナル2012)に間に合わなかったのです。

真波:泉田さんの宣言の後にチーム名を書いたくす玉がパカーンと割れる予定だったんですけどね。

御堂筋:せやからとりあえず正式名称で発表しとけてボク言うたのに。

 

――ロードレースチームは観客を楽しませるパフォーマ―としての側面はもちろん、スポンサーの広告塔としての役割が強いですよね。企業4社の頭文字だけでその役割は果たせるのでしょうか?

東堂:ダイヤモンドイズムはサイクリストにはおなじみのウェアメーカーだな。縫製の良さ、パッドの快適さは本場ヨーロッパ以上の物があります。これ以上我々の戦装束に相応しい高機能ウェアは他にない。ヨレックスは読者にもご存知の方は多いでしょう。テニスラケットやスキー用品で世界的なシェアを誇る企業です。テニスの南郷選手の活躍によって国内外でヨレックスの認知度は爆発的に高まっています。今年で自転車部門を設立して丸5年、試作段階を終えて、来年からロードバイクのフレーム製作に本格的に着手します。

巻島:つまり、YWPDはヨレックスの知名度を借りて日本国内に存在そのものを知らしめたいし、ヨレックスは欧州自転車業界に対して新作フレームを売り込みたい。企業名はバイクに堂々と描かれているわけだから、他のチームのスポンサーに比べてジャージに名前が書かれることをそれほど重要視していない。あとは俺たちが華々しく勝利を挙げるだけショ。自転車部門と俺たちは一蓮托生だ。

真波:ヨレックスのフレーム軽いんですよ~。踏み心地も抜群だし、踏めば踏むほどぐんぐん前に進んでいく感じ!山登り放題ギア上げ放題です!

巻島:フレームだけなら500gを切る軽さっショ。

 

――世界最軽量モデルが486gですから、軽さに置いてはハイクラスに位置づけられますね。

巻島:その軽さを活かしてYWPDでは全機材にチューブレスタイヤとウェアラブルカメラを搭載します。いくらフレームが軽くてもレースを走るには最低重量の6.8kgが必要だからな。

真波:ただシートポストに錘入れるだけじゃもったいないですよね。

東堂:カメラ映像はどこかで配信するんだったな。

御堂筋:Jスポルトで放送されるレースはライブ中継の翌日からチーム公式サイトで動画を公開します。それ以外のレースは一週間ごとにまとめてアップロードされる予定です。

真波:じゃあウィンドウふたつ開いておけば、Jスポルトのレース解説聞きながら俺たちの視点も味わえちゃうってこと?

御堂筋:ほんまやねぇ~お得やねぇ~。

巻島:御堂筋、顔が死んでるっショ(笑)

御堂筋:公開データが多いことはファンには嬉しいかもしれへんけど、敵さんにもおおっぴらに情報提供してるようなもんやさかい公開動画の選別は慎重にせんとあかんで。

真波:レース中の音声も録音されると思うのでお楽しみに~!

東堂:ふん、……話が逸れたな。

巻島:頭文字だけでスポンサーアピールになるのか?だったか。ウィニングロードとパワーバランスはヨーロッパでは街中で割とよく見かけるっショ。正直、こっちがアピールする必要なんてないくらいヨーロッパでは一般に浸透している企業だ。ウィニングロードは「自転車のある生活」をコンセプトにしたイギリス発のアパレルメーカーで、社長が日本人だ。まぁ、うちの兄貴なんだが。

東堂真波:えっ!?

巻島:あれ、言ってなかったか?

御堂筋:ボクは知ってたで。

 

――お兄さんが社長さんというのも驚きですが、同じくスポンサーであるウェアメーカーのダイヤモンドイズムと競合しないのでしょうか。

巻島:レース向けのサイクルウェアを扱っているダイヤモンドイズムとは着用シーンが違います。むしろあのピチピチスタイルに抵抗感のある層が狙いだ。ターゲットはサイクリストに限らないし性別も問わない。SNSや仕事の連絡のことなんか忘れて、ドリンクと小銭入れだけ持って自転車に乗る。広い空の下、風を感じて走る。過剰な装飾を取り払ったペダリングの妨げにならないシンプルなシルエットのパンツとお気に入りのバックポケット付きTシャツで。そういうシンプルなライドスタイルが今ヨーロッパで受けてるショ。他のカジュアルサイクルウェアの会社と比べて一番特徴的なのが、ロードレーサーとのコラボレーションデザインがメイン商品ってとこショ。

真波:巻島さんの着ているTシャツがフォーカスワン・サイクリスト(巻島の前所属チーム)とのコラボデザインでしたっけ。

(青と黄色の大蜘蛛が正面から着用者を抱きしめているようなデザイン。一見すると縦向きの色違いなユニオンジャックのようだ)

巻島:チームじゃなくて俺とのコラボだな。チームのメンバー一人ひとりにイメージパターンが作られて、それがTシャツやパンツ、バッグや小物に使用される。

 

――イメージパターンとは?

巻島:アイドルにもイメージカラーとかあるっショ。あんな感じでイメージカラーとイメージモチーフを組み合わせたテキスタイルデザインのことをイメージパターンって呼んでるショ。例えば俺ならイメージカラーは青と黄色、モチーフは蜘蛛だ。

 

――山頂の蜘蛛男(ピークスパイダー)ですね!

巻島:そうです、兄貴から聞いた話じゃ、真波には青系統に翼をモチーフにしたイメージパターンを作ってるらしい。

真波:わ~い!俺専用の柄!ねぇねぇ、巻島さん。そのデザインは自転車の塗装に使えないんですか?

巻島:そこはヨレックスとウィニングロードに掛け合ってみねぇとわからないショ。けど真波が言ったみたいにボトルやフレームにプリントするのも面白いかもな。サプライヤーとの話し合い次第でサイクリスト向けのグッズにも展開出来る。

東堂:うむ、東堂尽八Tシャツを着た女子たちが沿道に犇めくわけか。それも仕方あるまい、登れる上にトークも切れる、その上美形の俺が走るのだからな!

御堂筋:で、このコラボ商品の効果はいかほどなん?巻島くぅん。

東堂:こら!無視するな御堂筋!

巻島:去年フォーカスワン・サイクリストとコラボした時はチームファンクラブの加入率が年間で3割以上アップしたらしい。Tシャツやパンツもデザイン性の高さが一般に評価されているし、俺たちと同世代の、特に女性のレース観戦者は目に見えて増えたショ。ファンに聞いたら「自分の着ているシャツがどんな選手からイメージされたのか興味が湧いた」っていう人が多かった。

真波:ロードレースは観戦無料だから、そのへん敷居低いですよね。サッカーとか野球だとお金取られちゃうけど。

巻島:選手も自分のイメージパターンTシャツを着ているファンがいることで士気が上がって、積極的なゲームメイクに取り組む傾向が見られたな。平坦の一番きついときにこのTシャツが何枚も見える。それだけで山までいっちょ踏ん張ってやろうかって思えるショ。

真波:平坦の一番きついとき(笑)

東堂:オレたちはクライマーだからな。

巻島:ショ。それにコラボ商品の金額の一割がチームの活動資金になる。高額な個人スポンサー料は支払えないがチームの活動に資金面でも応援したいと思ってくれるファンの気持ちを受け取れる体制が出来上がったといっていい。

御堂筋:確かにだっさいチームTシャツよりはだいぶマシやな。

巻島:レースも観戦もスタイリッシュにいきたいっショ。

御堂筋:ところで、そろそろパワーバランスの話しておかんと時間押しとるんちゃうのぉ?(左腕の時計を示すような仕草)

東堂:むっ、それはいかんな!長丁場のレース中に欠かせないのが補給食であることは読者の皆さんもお判りでしょう。最後に紹介するパワーバランスは我々のエネルギーとなる補給食を作っているメーカーです。

真波:俺、夏にフランスのレース出た時に初めて食べたんですけど、おせんべいの味がしました!びっくりした!

巻島:エナジーバーは基本甘いからな。                                                                                                       

御堂筋:ボクは前のチームにおったときからずっと使うてます。レース中はパワーバランスの固形食を前半に、後半は吸収効率のええジェルタイプを持ってくるんですけど、補給食はどれもやたらめったら甘いんで、塩味の効いたパワーバランスの製品がヨーロッパで支持されるのもわかる気がします。こっち(日本)に帰ってきてどこにも売ってないんで、真波とは別の意味でびっくりしました。

東堂:前半から甘いものを食べていると後半の補給はどうしても水で流し込むような摂り方になってしまうからな。0dba5a076bb1ed7793a9ed62caaa68dd_s

巻島:あ~水分で思い出したんだが、俺たちがせんべいとか塩味って言うもんだから、たぶん読者の皆はパリパリサクサクした補給食を想像してると思うんだが、実際はライスパフを使ったぬれせんべいみたいなやつだ。カロリーフレンドみたいなサクサクした食感は食べ応え抜群だが、水分がないと食べられない。最悪ボトルがない状態でも食べられるようにパワーバランスの補給食はふっくらしっとりしている。

真波:これが結構おいしいんですよね~。

東堂:そうだな。もちろん即吸収型のパワージェルや食感を変えたグミタイプ、タブレットタイプもある。フレーバーも豊富に用意されているが、俺が食べ比べたところいずれも他社製品より薄味だ。ロングライドで飽きがこないように一つ持っておくにはうってつけだな。

――皆さんはどのフレーバーがお好きですか?

巻島:エビ塩だな。

東堂:醤油だ。

真波:え~、言われた。甘いのも好きですよ俺はメープル!

御堂筋:ようかん。

巻島:フレーバーっつったっショ!!

東堂:パワーバランスではスポーツ用のようかんも発売しています。

 

――自転車フレーム、補給食、アパレル、サイクルウウェアの4企業が出資しているチームYWPD。目標は「3年以内にワールドツアーチームランキング5位以内」とのことですが、最後にみなさんの今年の目標と狙っているレースをお聞きしてインタビューを終えたいと思います。

東堂:プロになって2年、目標であった5勝を超える7勝を達成しました。目標数値は変更しません。年間5勝、敵が桁違いにレベルアップしているワールドツアーでこの目標を達成するのは容易ではありません。それでも言おう、俺はその栄えある5勝目を「落ち葉のクラシック」で果たすと。

巻島:狙ってるレース被っちまったショ。ジロ・デ・ロンバルディアはクライマーが喉から手が出るほど欲しいレースだ。東堂とはチーム内でエースの座を賭けて戦うことになる。そのために狙っていくのが今年のジロ・デ・イタリア山岳ステージ制覇だ。3年後の目標は当然「マリア・アッズーラ(山岳賞ジャージ)」獲得ショ!

真波:青いジャージ俺も欲しいですね。けど、やっぱ燃えるのは山頂ゴールをトップで潜ること。チャレンジ回数が多いブエルタ・ア・エスパーニャに出たいです。「モンターニャ(山岳賞)」のジャージは俺に似合うと思いません?(※モンターニャのジャージは白地に青のドット柄)

巻島:クハ、プロ初年度で山岳賞掻っ攫う気か、真波。

真波:頂辺獲るっきゃないっしょ!(笑) (※巻島選手が練習中によく言うセリフらしい)

東堂:御堂筋の目標はなんだ?

御堂筋:トリプルクラウンや。

巻島:ぅえっ!?

東堂:本気か。

真波:いいね!御堂筋君はやっぱりそうじゃなきゃ!

御堂筋:ジロ、ツール、世界選手権の三大会制覇。普通の勝利じゃもう満足できん。狙ったレースは勝って当然。ダブルツール、トリプルクラウンは勝利を積み重ねていけば辿りつける高み。世界の頂点にボクは羽ばたくよ?目指すところはそこ意外にあり得ない。

――モニュメント制覇、山岳賞ジャージ獲得、そしてトリプルクラウン達成。こんなに大きな目標が聞けるとは思っていませんでした。ロードレースファンの一人として、その夢が実現する瞬間を心待ちにしています!

東堂:ありがとうございます。

真波:俺たちは強い!!

 

 

※レース名、地名、東堂尽八・巻島裕介・御堂筋翔・真波山岳以外の人物名、チーム名、企業名等は、記者の捏造による

※別記事とはパラレル設定で作成された記事です

photo credit: 23 Fuel via photopin (license)

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桐原十六夜
スポーツ選手に憧れること早十数年。テニス、アメフト、野球にバスケと長らく球技を愛好してきました。(もっぱら応援専門でしたが!) ロードレースとの出会いは小説。 本物が見たい!と足を運んだインターハイ神奈川県大会でその魅力に憑りつかれ、気が付けばCYCLETIMEの記者として世界を飛び回る生活に。 レースレポートを中心に、選手たちの活躍を読者の皆様にお届けします!!